問: これは、「誰かさん」による日記です。
誰の手によるものか、考えながらお読みください。
私は、決心した。
夢を掴もうと。
いや、前々から決心はしてあった。
後は、一歩先行く為の、ほんの小さな勇気だけだった。
昔から、私は、引っ込み事案であり、他人の影に隠れることが多く、特技は?と聞かれれば、「いっぱい食べること!」と答えることしか出来ない子供であった。
寒い地方の小さな島で生まれた私は、5歳の頃にきらびやかな東京に引っ越してきたとき、言葉も何もかも田舎めいていた。
それのせいでいじめられたことはなかったが、それが私の引っ込み事案を助長させたのは、確かだ。
そんな私が唯一心満たされたのは、「おかしないきもの」という本を読んでいるときだけだった。なかなか友達と呼べるものも出来なかった。
そんな私の手をひいて、遊んでくれたのが、今、隣にいるただ唯一の親友であった。
彼は、私を色んなところへ連れて行ってくれ、様々な世界を見せてくれた。
彼の隣にいれば、退屈というものは、この世には存在しないのではないかという錯覚を起こさせた。
彼は、ある種、特殊な才能を持ち、体操、ボウリング、フィギュアスケートと、何でもこなした。
それは私の事ではないのに、まるで私自身のことの様に思われ、私の密かな誇りでもあった。
そしてとうとう彼は、念願の夢である、宇宙飛行士となった。
宇宙から帰還し、大勢のマスコミに囲まれ、「今のお気持ちは?」と聞かれた時、
「やっと夢が叶いました」
と満面の笑みで、彼は、答えた。
そして続けた。
「僕には、親友がいるのですが、彼の夢もかなってくれると嬉しいです」と。
私は愕然とした。
私には、夢がない。
自分自身について数日間悩んだあげく、手に取ったのは、昔読んでいた、一冊の本、「おかしないきもの」であった。
本に載っている多くの生き物。
地球上には、私達以外の多くの生き物がいる。
それは、生命の神秘と、地球の未知の可能性を私に示した。
そうだ、私のやりたいことは、未知なる生物を探すこと。これしかない。
その時、私は決心した。
そして、宣言する。
「わたしは、UMA(未確認生物)ハンターになるのですぞ!」
そう息巻くムックの背中を見て、ガチャピンは、「雪男の君が一番のUMAなんじゃないかなぁ」とこっそりため息をついた。